鋳物の空洞をつくる専門企業
株式会社藤原


インタビュー&ライティング
内橋麻衣子(取材日:2022年9月)
 
 
 
 

 
https://nakago-guinomi.com/
http://www.k-fujiwara.jp/company.php
 
 
ギフトショーの出展ブースで、
ブランディングがかなった!
事業の成長を支えてくれる、
頼れる相談相手


2009年の設立以来、鋳物製品に空洞をつくる「中子(なかご)」の製造から鋳造まで、一貫生産の技術を活かし様々な取組を続ける株式会社藤原。酒米の王様「山田錦」の、最高峰の生産地であるふるさとを元気づけたいと、2019年に錫(すず)製品ブランドNAKAGOを立ち上げ。手にした指の間から、身に着けた宝石のように輝きがこぼれる錫の酒器は、口元へ運ぶたびに顔を明るく華やかに見せてくれる逸品。
 
 
 
こんなにオシャレな
ブースをつくる人は誰!?


 

 

 
今村明浩さんを知ったのは、弊社が「東京インターナショナル・ギフト・ショー(*)(以下ギフトショー)」に初めて出展した2020年2月のこと。今村さんがプロデュースされた小野商工会議所の出展ブースが、あまりにおしゃれで驚いたことがきっかけでした。
私たちが出展していたのは、兵庫県ブースの製造業コーナー。弊社の酒器の向かいにはシャワーヘッドが並んでいる小さなスペースで、どうしたら個性を出せるのか考えるだけで精一杯のブースでした。
そんな出展も3回目を数えた2021年9月、私たちのブースに今村さんが立ち寄られました。その時の弊社の展示品は、いけばなに使う錫製の乾山(けんざん)。生花を飾りたかったんですが近隣の花屋も知らず、ドライフラワーを飾るしかないとあきらめていたら「現地調達の手配もお手伝いできますよ」と言われたんです。
当時は、プロデュースを依頼できるほど育っていない製品なので、自分たちで準備するしかないと思っていました。錫製品にNAKAGOというブランドがあると知ってもらうことが、ギフトショーに出展する目的だったんです。でも、大手企業の方と名刺を交換しても、出会いがその後の取引につながりません。そんな出展に意味があるんだろうかと、思い始めていた時期でもありました。さらに、ブースを訪れる人の中には、製品の価値より値段を下げる交渉にしか関心の無いバイヤーさんもたくさんいました。
「何かを変えなくてはいけない。」
そう感じた背景には、どうしても届けたいNAKAGOの価値があったんです。
 
*東京インターナショナル・ギフト・ショー:国内最大の企業展示会、日本最大のパーソナルギフトと生活雑貨の国際見本市


 
 
 

 
自社ブランドの製品価値を
ギフトショーで高めたい


NAKAGOの製品は、ひとつ1万円を超える高価な器です。手間ひまかけて職人がつくるNAKAGOに、価格に見合う品を持たせて格を上げ、ワンランク上へステージアップさせたい。製品そのものに興味を持ち、足を止めてくれる人に出会いたいと思っていました。
そのためには、製品のブランディングが必要です。ブランディングのためには、兵庫県のパッケージブースではなく、弊社単独で出展しなくてはいけないと考え、まずはギフトショーのことを知ろうと思いました。そこで、ギフトショーを知り尽くしていると感じていた、今村さんに相談することにしました。
実際に今村さんは、ギフトショーの知識がとても豊富な方でした。例えば、どのフロアにどんな客層の人が来るのか、来場者が多いのは何日目か、キッチン・インテリア・ガーデニングなど多くのゾーニングがされていることや、その中でも出展のためのディレクション審査が行われる「Life×Design」という人気のゾーンがあること、さらに出展に使える補助金についてもご存知でした。ギフトショーを主催する運営担当者さんや審査員の先生方とも仲が良かったのには、本当に驚いてしまいました。とにかく、私が求めている情報がすべて今村さんの手にあったんです。
「口当たりがまろやかになるという、錫の酒器のストーリーを語るのではなく、まずはこのキラキラした器に目を留めてくれる人に出会いたい。酒器そのものに興味を持っていただいた人に、ストーリーを伝えたい。」
そう話す私に今村さんは、「ライフ×デザインのゾーンに出展しましょう」と提案してくださり、審査に必要な準備も手配もすべて引き受けてくださいました。そして、私が希望しているイメージに合わせ、アイデアを出し合いながら一緒にプランを作っていきました。
 
 

 

 
手ごたえがありすぎた3日間、
反響の変化に嬉し涙で終えた最終日


出展審査を無事に通過し、ブースをつくり上げた結果どうなったか?
ブースが美しいからという理由で多くの人が立ち寄ってくれるという、初めての経験ができたんです。
「このセンスのいいブースは、いったいどんな商品を取り扱っている企業なの? 」と、今までとはまるっきり異なる層のバイヤーさんたちが、どんどん弊社のブースを訪れました。中には超有名百貨店のトップバイヤーもいらっしゃり、まさに届けたいと思っていた人に届き、共感してほしいと思っていた酒器の価値をわかってもらうことができたんです。
入口両サイドの隅に入れたテーマタイトルや、さりげなく壁に添えた会社のQRコード。ライティングの位置や光の質を計算し、影をインテリアに使った空間づくりなど、商品のいちばんいい見せ方を知っている今村さんならではの演出のおかげでした。
また以前は、「錫製品をOEMでつくります」といくらアピールしても反応がなかったのに、今回は何も訴求していないにもかかわらず、「空間が素敵だから、オリジナル商品も素敵なものを作ってもらえるのではないかと思って」と、OEMの相談がかなりの件数にのぼったことにもびっくりしました。
他にも、「こういうブースをつくった人を紹介してほしい」と頼まれたり、「空間づくりのためにブースを出してもらえませんか?」と服飾ブランドの方から出展の依頼があったり、手ごたえがありすぎた3日間を終えることができました。一人で覚悟を決め、準備を進めたプレッシャーの中で、初めての挑戦としてつくりあげた空間が、思い描いていた以上にNAKAGOの価値を高めてくれたのです。
初めての出会いで、しかもふんわりと思い描いていたイメージしかなかったにもかかわらず、こんなに伝わるものなのかとびっくりするくらい具体的な形にしていただいたことに、ただただ感動しました。初めて手ごたえを感じられた嬉しさに涙してしまった展示会出展でした。
 
 
 
 
鋳物と酒器と酒米の融合で育む、
ふるさとへの想い


実は、酒器をつくろうと思い至った背景には、弊社社長のふるさとへの想いがあります。
社長の出身地は、酒米・山田錦の中でも最高品質の米が穫れる「特A地区」と呼ばれる地域です。全国でもこの周辺のごく限られた地域でしか育てられない貴重な酒米を、全国の酒蔵が待っています。しかし、近年は高齢化や後継者不足から、企業が事業化にでもしない限り、個人で米づくりを継承することが難しくなっているのです。
自分が生まれ育った「特A地区」を、もっとPRすることで守り続け活性化させたい。そう考えた社長は自社に農業部門を立ち上げ、米づくりから酒造りまで取り組むことを決めました。
酒米農家にスポットが当たるよう、お酒には村の名前をつけ、ラベル制作から味づくりまで村の人たちに参加してもらい、地元・加東市の「山田錦 乾杯まつり」で酒器のおひろめも行いました。また、お酒や酒器を試せる場所が必要だと神戸北野に店も出し、2022年秋には地域の酒米農家がお米の乾燥を行えるようにと、自社オリジナルのライスセンターまで完成させました。
鋳物製造や酒器の製造販売、農業など、一見ばらばらなことをしている会社に見えるかもしれませんが、すべて一つの想いが循環し、融合しながら前進しています。地元農家を支えることで、お酒を通じて酒器を広め、その価値を伝えることで鋳造事業を活性化してNAKAGOに戻す。実績を肉付けしながら想いを具現化し、会社を元気にしていきたいと思っています。
弊社が想いを大切にしているブランドNAKAGO。その想いが事業としてきちんと成り立つよう、これから育てていくために、今村さんに教育とサポートをお願いしたいと思っているんです。
 
 

 

 
相談できない立場の人が、
頼っていける相談相手


会社の中で決定権を持ち、判断をゆだねられている人が安心して相談できる場所だと思います。
私自身、展示会の出展でも、相談できる場もないまま自分で判断し、指示を出してきましたが、今村さんに出会って、何でも尋ねることができる、頼れる場ができました。
どんなときも目の前のお客様と真剣に向き合い、親身になって関わられている今村さんなので、様々な角度から物事を眺め、的確な判断ができるのだと思うんです。
いい商品をつくっていても、売り方やブランディングの方法がわからない経営者や職人の方は多いはず。いい製品の、いいところを見つけ、良さがきちんと伝わるようディレクションをしてもらえます。
でも、本当は誰にも教えたくない人。独り占めしておきたい方なんですけど(笑)。
 
 
 
今村さんってこんな人!


人に尽くす人です。人と人としてのお付き合いを大切にしながら、仕事としてのラインはきちんと保ったまま業務を進めていらっしゃるので、信頼できる距離感でつながることのできる人だと思っています。
 

 

 

インタビュー&ライティング
内橋麻衣子(取材日:2022年9月)